今回の五月祭特別企画のテーマはジプシージャズ。
ドキュメンタリー映画「最後の音楽」と「山本佳史TRIO」のライブをお届けします。
※予約満席となりました(4/10)
FILM
ドキュメンタリー映画『最後の音楽』
(上映時間70分 監督:伊藤義人)
~いつか辿り着く音楽~
フランス生まれの音楽『ジプシージャズ』が今熱い。この映画は日本で活動するジプシージャズミュージシャン達の姿を追う。そこから浮かび上がるものは?音楽が持つ「本来の価値」とは。
LIVE
山本佳史トリオ
山本佳史 (solo-guitar)
友利竹雄 (rhythm-guitar)
長谷川光 (contrabass)
日本を代表するジプシージャズギタリスト山本佳史 率いる2ギター&ベースのトリオ編成。ラ・ポンプ・ビートにのせて強烈にスイングする音を聴かせる。
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What’s Gypsy Jazz ?
キーワードは、
マヌーシュ、マカフェリ、ラ・ポンプ、ジャンゴ。
ロマ(ジプシー)音楽とスウィングジャズを融合させたジプシージャズ。発祥国フランスでは「ジャズ・マヌーシュ」と呼ばれています。口にするだけで何だか楽しくなってくるような響きです。ちなみにマヌーシュとはフランス語でロマの意味。
「マカフェリ」とはギターの名前で、形も独特なこの楽器はジプシージャズの代名詞的存在です。
たいていの場合、ギターを中心に少人数で演奏されます。ドラムもピアノも無く、その役割をリズムギター奏者が担います。これがこの音楽の最大の特徴とも言えるでしょう。通称「ラ・ポンプ」と呼ばれる軽快なリズムです。
そして伝説のギタリスト「ジャンゴ・ラインハルト」についてですが、この話はちょっと長くなりますのでこのあとで詳しく。
*ジプシージャズの歴史豆知識*
けっこう意外な成り立ちのお話し…
1930 – 40年代にフランスで活躍したジプシー出身のギタリスト「ジャンゴ・ラインハルト」が、アメリカのスウィングジャズの影響を受けながら独自のスタイルを完成させます。そしてジャンゴの没後、彼の影響を受けたミュージシャン達の手によって様々な要素が加えられながら「ジプシージャズ」というジャンルが確立されていきました。マカフェリギターの使用もまたジャンゴの影響です。その独特な音色と相まってこの音楽の象徴となっています。
「ジプシージャズ」という言葉が使われ始めたのは1980年代末頃からとも言われていますが、ジャンルとして広く認知され始めたのは2000年代に入ってからです。ネオ・トラッドと呼ばれる最近のトレンドの影響もありました。ジャンゴの時代から時を経て、そのフォロワー達が確立したジプシージャズ。古いようでいて、実は新しくもある音楽なのです。
*Let’s search on YouTube ♪*
観始めたら止まらない….
youtubeでジプシージャズ動画を検索すると、実にいろんなタイプのバンドが出てきます。
弦楽器中心の小規模編成が代表的ですが、一方で管楽器やアコーディオン、ボーカルなどを加えたバンドもあります。
音楽性も様々で、スウィングジャズの雰囲気を追求するもの、ジプシーテイストが強いもの、パリミュゼットの影響を受けたもの、あるいはボーカル曲をメインに演奏するもの等々…
いろいろありますが、こうした懐の広さもジプシージャズの魅力のひとつです。
「ジプシージャズ」と呼ばれるジャンルですが、当然ながらジプシー以外の演奏家もたくさんいます。今では日本を含め世界各地で演奏されるようになりました。
基本的には生音&少人数で成り立つ音楽です。街角でも、ホームパーティーでも、気分が乗ればパッと演奏できます。肩ひじ張らず、粋に気楽に楽しむのがジプシースタイル。
gypsy jazz、jazz manouche、などのワードで動画検索してみて下さい。Spotifyにもジプシージャズのプレイリストがたくさんありますので、こちらも要チェックです。
*伝説のギタリスト、ジャンゴ*
ジャンゴ・ラインハルト(1910~1953)
ロマの旅芸人一家に生まれたジャンゴは、家族と共にヨーロッパ各地を旅しながら楽器演奏を覚えました。
16歳の時にビリー・アーノルドのバンド演奏を聴いて以来、ジャズに傾倒。そして18歳の時、後のプレイスタイルを左右する大きな出来事が起こります。彼のキャラバンが火事に見舞われ、その際の火傷で左手の小指・薬指が動かなくなってしまったのです。しかしジャンゴは不屈の精神で努力を重ね、次第に独創的な奏法を身につけていきます。
1934年に弦楽器のみによる編成のバンド「フランス・ホットクラブ五重奏団」を結成します。5人のバンドメンバーのうちジプシー出身はジャンゴと弟のジョセフだけです。このバンドで共に活動していた盟友ステファン・グラッベリは後に、ジャズ・バイオリンの巨匠と呼ばれることになります。
当時のジャズは管楽器やピアノが主役の音楽でした。エレキギターがまだ登場しておらず、ギターの生音では音量不足でした。フランス・ホットクラブ五重奏団ではギターが立派な主役となりバイオリンと交互にソロをとっています。ドラムの無いユニークなバンド編成と、カフェの喧騒に負けないジャンゴの力強いピッキングが「ギターソロ」の扉を開いたのです。
この初期の頃の演奏スタイルが、後のジプシージャズの基となっています。
ジャンゴ自身はその後、バンド編成を変えながら活動を続けます。当時の最新のアメリカ音楽を吸収しつつ独自の奏法を進化させていきました。
1953年に43歳の若さで急逝。その短い活動期間の中で、同時代の多くのミュージシャン達に影響を与えました。そして彼が残した音楽は今もなお、世代を超えて愛され続けています。